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 Hoshi-fune・星舟

​ Story

その世界の「星」は、一見金属にも見える、歯車型の生命体が作ったもの。

「星の種」と呼ばれる命をもった歯車は、初めは指の先ほどのサイズしかありません。

それは宇宙を漂いながら成長と分裂を繰り返し、

またその過程で周囲に漂う塵を引き寄せ、自身を覆う殻を形成します。

このように何百年もかけて成長し、人が住めるほどのサイズに成長すると、

それは星と呼ばれ、その殻は大地と呼ばれるのです。

 星は成長期を終えると、自らが決めた軌道を回遊し始めます。​

星の中でも大型に育って、沢山の人が移り住んで街が築かれた物は、

その昔、人や荷物を乗せて水上を渡ったいう「舟」と言う乗り物に見立てて、

星の舟、〈星舟〉と呼ばれます。

 

回遊する星がすむ世界〈星舟世界〉

あなたのすぐ傍らに開いた異世界です。​​

 

"Hoshi seeds"In the another world the clock wheels which are so called "Hoshi seeds" create new "Hoshi-Fune".In the beginning the clock wheel is tiny, fitting in your hand.Over a long time, while floating in space it grows bigger and divides.The clock wheels collect star dust, eventually growing to become gaint"Hoshi-Fune".On each Hoshi-Fune, unique environments and cultures develop.

ホシノタネ

星舟世界の星は、初めはこんな歯車の形をしています。

今はこんな小瓶に入ってしまう星の種も、何百年後かには小さな家が一軒建つほどのサイズに成長します。

​では気の向くままに好きな乗り物に乗って、星めぐりをお楽しみ下さい
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​夜桜見物の街、或いは眠れる大亀の上の街
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 この星はある特定のシーズンになると、宇宙中から沢山の人々が集まってくる。

 この空域ではごく限られた期間だけ、それはそれは美しいピンク色の霞が発生するのだ。

 この星に逗留している間、人々は「お花見」と称して、連日飲み、騒ぎ、霞に酔うがごとく浮かれて過ごす。そして霞が消えると、人々はふいに夢から覚めたように慌ただしく帰途につき、日常に戻っていくのだ。 

 

 ところでこの星は、生きている生物に星の種が付着し、星として育ちつつあるとても珍しい例だと専門家は言う。ロンサムジョージと呼ばれているこの大亀は、齢一万歳とも言われ、未だ千年を超える長い長い眠りの中にいるのだ。

 いつか目を覚ますのか?

 それとももう夢から覚めることはないのか?

​ どちらにしても、人の夢と違って亀の眠りは深く広大で、その謎はまだまだ解けそうにない。

酔いどれ星
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この星はさほど大きくはないが、宇宙中でその名を知られている。巨大な酒場にも例えられるこの街に、ずらりと軒を連ねるのはもちろんバーや居酒屋、スナックなどの飲み屋だ。                                 
 この星のおかしな魚のような外観は、暗い宇宙空間でも遠くから一目でわかるように外殻に取り付けられているもの。
 なぜ魚?と聞けば、行きつけのバーのマスターは「昔、日本という星では酒場はみんな軒先に〝アカチョウチンアンコウ〟をぶらさげて客を誘っていたのさ」としたり顔で教えてくれた。
 アカチョウチンアンコウ…そんな生き物いたかな?
 ま、真偽のほどは別として、ここは酒を愛する者たちにとってパラダイスだ。  
 噂ではこの星で探して見つからない酒はないと言う。
 飲んでいるうちに自分の存在が希薄になってしまうという、存在自体があやふやな幻星の妖精酒も、劇物指定だと言う飲みすぎると体が末端から燃え始めるという、ドラゴンの火吹き酒も。
 さて、今日はどの店を攻めようか。
竜宮城
 メウシ座星雲のはずれ、かなり辺境を周遊する星舟だが、人気の観光地の一つ。
 それはこの星が、ソラノアオ鉱石を大量に含んだ地殻を持つため、遠くから見ると星全体が青や紫に輝き、とても幻想的かつロマンティックだから。
 人々は青い光に包まれた街を、伝説の海底の城、竜宮城に例える。
 新婚旅行先にも大人気のこの星だが、確かあの物語のカップル、乙姫さんとウラシマさんは、彼が彼女との約束を破り、二人はもう再び出会うことはなかった、という悲しい結末だったはず。

 まあ、今時の若者に「ゲン担ぎ」なんて言っても通じるはずもないか…。

 おや、街のオペラ劇場の今夜の出し物は…「ニンジンカ・男と女の約束の末」。うーむ、何やら不穏な感じのするタイトルの劇だな。
​ ああっ!見るからに新婚さんなそこのお二人。入るのはやめておいた方が良いですって!
​自来也星(じらいやせい)
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この星舟の売りは何と言っても温泉。
 白い湯煙たなびく街並みには、効能もタイプも違う温泉宿がずらり。
 お肌に良いという金色の湯気がたなびく黄金風呂に、真っ黒な湯に青白い光が点滅する蛍藻が漂う星空風呂。華厳の滝風呂や千人風呂、果ては冥途の湯という物まであるという。
 人々が次はどの風呂に入ろうかと楽しげに行きかう街を、今日も初代オーナー※にそっくりだと言われるカエルの像と巨大スクリーンに映し出された彼の故郷の山が見守っている。
 
 ※ジライ・タナカは若いころ、この星で温泉を見つけ、小さな銭湯「自来屋」から、この一大温泉リゾートタウンを一代で築いた。彼のカエル似の風貌はネットCMで人気を集め、「元気があれば、何でもできる、この湯は元気の源だ」はその年の流行語大賞になり、この街を一躍有名にした。
三日月の街

この奇妙な鳥のような形をした星舟は沢山の工場に埋め尽くされている。

 この空域で消費される諸々の物が、ここで材料から加工され、製品になって旅立っていくのだ。沢山の煙突から吐き出される工場の煙は星の後を何十キロもたなびき、まるで錦の羽衣のようだ。

それが幻想的で美しいと、わざざわざ訪れる者も多いと聞いた。

 

 作家話:川崎生まれの私は遊び場所は近所の工場の跡地。錆びた鉄骨やクレーン、捨てられた機械などが半分草に埋もれている場所でした。夕暮れ時、赤く色づいた空に黒々と浮かび上がるそれらは、どこか生き物めいて、息を殺してじっとこちらを見つめているような気配がありました。ごつごつとして赤錆の浮くスクラップ達。どこか寂しく、独特の美しさがありました。それが私の原風景だと気が付いたのは星舟を作り始めてしばらくたった頃でした。

百貨大楼星
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ココで売っていないものはない!という、毎日数千人ものお客が訪れるという百貨大楼。
この星舟は交通の要所を周回し、昔から様々な小さな店がひしめいていたが、近年この百貨店グループに統括され、星全体を覆う規模のデパートとしてリニューアルされた。
 今はネット販売も充実し、わざわざ店まで足を運ばなくても大抵の物が購入できる。しかしはるか遠くの星域から、わざわざ買い物バスを仕立ててやってくる人々がいる事から見るに、ショッピングとは初めて見る商品=未知の物に出会うという点で、冒険の一種なのかもしれない。
 この百貨店には全宇宙の珍味から最新のフォログラフファッション、呪いの宝石、果ては橋や古城、遺跡までも本当になんでも販売されている。 
 以前友人が冷やかしでGOJIRAを購入したいと言ったところ、百貨店の支配人らしき人物が真顔で「調達は可能です。しかしこの生き物を飼うには、飼育条件を幾つかクリアし、宇宙条例を2つ、3つ破っていただくことになります。お客様の覚悟が決まり次第、手配をさせていただきます。」と言われて、友人はびっくりして逃げ帰ってきたらしい。
 あの支配人、きっと四次元ポケットや、どこでもドアを持っているに違いない!と友人は真顔で言っていた。
 まあ、そんなこともあるだろう。
 だって百貨店星なのだから。


 付け足し:星の周囲を遊ぎ回っている沢山の魚たちは、餌付けをされていて、深海魚のように光る体で客引きをしている。
ゆうれい星

 辺境の空域、L―18エリアを飛んでいた時だった。

突然、周囲に青白いガスが立ち込めたかと思うと、飛行艇のすべてのセンサーが狂いだし、その場に立ち往生することになった。

 遭難信号を出すべきか迷っていると、突然目の前に不気味な緑の燐光をまとった星舟が現れた。

 街は何かに破壊され、ガレキと化しているようだ。先端の巨大なクレーンがぎしぎしと揺れて、星はまるで凶兆を告げる不吉な黒い鳥のように見えた。

 何があったのだろう?この星は工場?それとも何かの実験施設に使われていた?食い入るように見つめていると星舟は再び燐光に包まれ、幻のごとく姿を消してしまった。

 しかし消える直前、奇妙に明るく輝く貯蔵タンクと、街にたった一つだけ灯った明かりを見たのは決して気のせいではない。

 気が付くと白いガスは消え、船内の各種センサーは何事もなかったように正常に点灯していた。
宗教区

 この星舟には宇宙中のありとあらゆる宗教の寺や神院、神殿が集まっているという。

 だから宇宙中のどんな神にも、いっぺんに詣でる事が出来る、とてもありがた~い場所。

 どんな神にもと言うことは、つまり邪教と言われる神もきちんと祀られている。なぜならこの広大な宇宙では光と影は混在していて、ゆえに正と悪との境目も、限りなくあやふやだから…という理由だそう。

 ところで星の船首像(トレードマークになっている建物や構築物)の長い鼻にヒレを持った生き物、ゾウガメは、ある高名な宗教学者の案によって製作されたもの。彼の研究によれば、ある星ではその昔、巨大なゾウガメ※という生き物が大地を支えていたと信じられていたとか。
 

 ※作者注 古代のインド星では、大地は巨大な亀の背中に乗った4頭の象が支えている、と信じられていました。この星舟の世界では長い年月の間に正確な伝承は失われ、象の頭と亀の体が合体したゾウガメなる生き物がいたのだと誤って伝わっているようです。

​ 昔どんなに栄華を誇っても、長い年月の前にはその栄華もほんの一部、それも誤ってしか伝わらないものさ!とゾウガメの目は言っているようです。

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これは宗教区の街はずれにあるまじない屋。ここには占いやまじないに使う、ありとあらゆる怪しい薬草や物が売られている。玄人向けの店だが、最近なぜか修学旅行の学生達で、いつも込み合っている。店員に聞くと、今この店の一番の売れ筋は、恋の成就に効き目ありという、魔女の念が込められたキーホルダーだとか。

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​まだまだ つづく

Ikka Tamura

Yokohama, Japan.

Contact:

tamura236@hotmail.com

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